日本の歴史のある企業の中には、時代にあわせてロゴのリニューアルを実施してきた企業が沢山あります。ロゴマーケットでは、そんな企業ロゴの軌跡をシリーズでご紹介しています。
今回は、花王の「ロゴマークの変遷」を参考に、花王のロゴの変化に学ぶロゴ制作のヒントを見ていきましょう。
ロゴ製作をお考えの方やリニューアルをお考えの方は、ぜひご一読ください。
※本記事では、比較・検討のため著作権に規定された範囲内で画像を引用しております。そのため、引用画像の権利は著作者に帰属しています。
1890年と1943年のロゴマーク
1887年に創業者である長瀬富郎が、洋小間物商「長瀬商店」を設立しこれが花王の前身になりました。長瀬商店で取り扱っていた輸入品の鉛筆に「月と星のマーク」があり、これをヒントにして、長瀬富郎が1980年にロゴマークを考案しました。この最初のロゴマークは、「美と清浄を象徴したマーク」とされています。
最初のロゴマークは「花王石鹸」に使用されました。レタリング(文字)がレトロな雰囲気ですね。髭も見られおじさん・おじいさんのようなイメージです。月は口から煙のようなものを吐いており、これが吹き出しになっているのがユニークです。
1943年のロゴマークは、右向きだった月が左向きに。これは、「これから満ちていく左向きの月の方が縁起がよい」ことから変更されました。眉毛の太いおじいさんのように見えますね。表情が柔和になり温かみを感じるデザインになりました。
1948年と1953年のロゴマーク
月のマークを製品や広告に使った際に、「より印象を強める効果を」狙いリニューアルをしました。月の顔が男性の顔から女性の顔へと変更され、ややふっくらとし、月の上と下の部分が繋がり、丸いシルエットに。太い線でハッキリと描かれていますが、女性的なデザインなので強さよりも柔らかさや優しさを感じられます。ただし目的にあるように、印象に強く残るロゴです。
「消費者に親しみと信頼感を与える」ように、月の顔が子どもの顔になりました。ロゴの色も黒からオレンジに変更されています。ビビットなオレンジを使った子どもの顔のロゴは、元気で明るい印象を受けます。長いまつげがありますが、中性的なデザインです。
戦後になって製品の種類が増えて、従来よりもクリームや女性向けの製品の取り扱いが多くなりました。そのために、月のマークも製品にあったものに変化しています。
1985年のロゴマーク
「花王石鹸株式会社」から「花王株式会社」への社名変更に伴ってロゴデザインもリニューアルされました。コーポレートカラーは、新鮮で躍動感のあるグリーンに一新。レタリングに「花王」の文字が復活しました。子どもの月はそのまま起用されています。
社名変更と共にコーポレートカラーが刷新され、ロゴデザインをリニューアルすることは珍しくありません。1985年のロゴマークのリニューアルは、従来のロゴが持つ印象を大きく変化させるものではなく、歴史を受け継ぎつつ新鮮さがあります。イメージカラーを変更し少し手を加えるだけで、新しいイメージを加えられるというのは勉強になりますね。
2009年以降のロゴマーク
海外進出を進める中で、「グローバルに統一した企業イメージを印象づける」目的でレタリングを漢字の「花王」から、英文字の「Kao」に変更。このロゴは、日本だけではなくアジアのコンシューマープロダクツやケミカル事業などで使用されています。月のデザインは変わりませんが、線が細くなりよりシャープになりました。
世界で花王グループを表すロゴとしては、レタリングのみの「Kao」が使われています。
シンボルのないシンプルな文字のみのロゴは使い勝手が良く、社名やブランドを周知するのに効果的です。また、花王のように取扱製品が多い企業では、全てのプロダクトに合うように、シンボルを起用しないケースも多くあります。さらに花王は商品ブランドや商品別にロゴマークを作っているので、文字のみのシンプルなロゴであれば、並べて表示しても製品ロゴが目立つのも嬉しいポイントです。
使い分けができるように、シンボルマークとロゴをわけて制作するのも良いかもしれません。
※本記事内の画像引用および参照は、花王「ロゴマークの変遷」およびTECH+「なぜ花王のロゴには”月”が描かれているの? -広報さんに聞いてみた」から行っています。
おわりに
「ロゴの歴史に見る変化~花王編~」をご紹介しました。創業当時から変わらぬモチーフを起用しつつ、時代や会社の方向性にあわせた変化をしてきた花王のロゴマーク。
企業の顔となるコーポレートロゴの変更は、慎重になる向きも多いですが、伝えたいことをしっかりと考え、ユーザーと向き合うことで、より親しまれるロゴを作ることができます。
長年愛される企業になるためにも。ロゴデザインやリニューアルは手を抜かずにしっかりと取り組むことが大切です。