みなさんは昭和と言えばどんなものを思い浮かべるでしょうか。
戦争や戦後、高度経済成長期、バブルなどなど、昭和を表す事物はたくさんあります。
そして日本の文学界においても、昭和とはおそらくとても重要な時代だったのではないでしょうか。
今なお色あせることのない素晴らしい作品が数多く輩出されたのも、昭和の時代。
もちろん平成から令和にかけても素晴らしい作品は生まれています。昭和には昭和の、独特のカラーがあるような気がします。
そんな激動の文学界で創業を始めた筑摩書房。
日本だけではなく世界中の作品を集めて全集として出版することが多く、また「ちくま文庫」などのシリーズもあり、読者層の求める作品を世に送り出してきました。
そんな筑摩書房のロゴマークは、とても独創的なマークが印象的です。
経営破綻も経験しながらも文学全集やシリーズものを刊行し続けてきた
画像引用元:筑摩書房
1940年に東京帝国大学出身の古田晁氏が創業。社名は古田氏の故郷・長野県東筑摩郡筑摩地村(現塩尻市)にちなんで「筑摩書房」と付けられました。
1946年に創刊した雑誌「展望」では、太宰治や大岡昇平、中野重治、平林たい子などが作品を発表し、文芸雑誌として人気を博しました。
その後「太宰治全集」や「宮沢賢治全集」などの日本文学全集や、「世界文学大系」「世界古典文学全集」などの世界中の名作を集めたシリーズを刊行。
順調に思われていた経営ですが、1973年に古田氏が逝去すると、それまで古田氏一人に任せっきりだった経営が傾き、1978年には業績不振で会社更生法の適用を申請し経営破綻。
この前日には「つげ義春全集」を発売するというタイミングで世間を驚かせました。
その後も全集や教科書、1980年からは「ちくま少年文学館」、1985年からは「ちくま文庫」を創刊し、徐々に経営も安定化。
2020年には創立80周年を迎えました。
後世に名を遺す作家たちが街を闊歩した時代背景と深くリンクするロゴマーク
筑摩書房のこのシンボルマーク。
ホームページなどでは横に社名が入ったバージョンが掲載されています。
見る人によっては「亀」や「ペンギン」などと言う人もいるようですが、正解は「鷹」。
この図柄は昭和の文学界で大きな影響力を持っていた、美術評論家であり装丁家であり資産家の青山二郎氏のデザイン。青山氏が青空をはばたく「鷹」をイメージして作ったそうです。
青山二郎氏の名前で、一気にこのロゴマークの格調が高くなったような気がします。
なぜなら、青山氏については昭和を代表する作家たちが、いろいろな物語の中でフィクションとしても描いています。また現代でも青山氏をテーマにしつつ昭和という時代を解説する書籍も出版されています。
それほどまでに「昭和」という時代の日本の文学界には大きな影響を与え、なくてはならない存在だったと言えるでしょう。
文学界にとっても独特な昭和カラーが、このロゴマークからも見えて来るようですね。
そう考えると、昭和という時代の文学は令和の今でも、とても貴重な作品がたくさんあったのだとあらためて感慨深い気持ちになります。
出版社では同じように動物をモチーフにしたペンギンブックスのロゴマークについての記事「人気を支えたロゴマーク | ペンギンブックス」もご参考にしてみてください。
参考サイト
筑摩書房
wikipedia