近年、ロゴフォントに大きな革命が起きています。
それが「セリフ体からサンセリフ体へのロゴフォントの切り替え」です。
これまでハイブランドのロゴにはセリフ体が多く使われていました。しかし、ここ数年はサンセリフ体を用いたロゴへのリニューアルが相次いでいるのです。
ここでは、そもそもセリフ体とは何なのか、なぜこのような動きが生まれているのか、サンセリフ体のロゴマークは作らないほうがいいのかについて触れていきます。
セリフ体とは?
セリフ(serif)体は、文字の書体の一つです。別名ローマン体とも呼ばれます。文字の線の端に装飾(セリフ)がつけられた英字書体のことで、細い横線と太い縦線で構成されます。イメージとしては、日本語フォントにおける明朝体に近いです。
縦線、横線、セリフの太さが異なるので文字にメリハリが出やすく、「長文でも読みやすい」という特徴があります。また、それぞれの線がほっそりしているので読み手に負担を与えにくいともいわれています。
そのため、新聞や小説、論文のような長い文章はセリフ体で書かれることが多いです。
たとえば、セリフ体の代表格である”Times New Roman”や”Garamond ”は、その可読性の高さから多くの新聞で採用されています。
サンセリフ体とは?
一方で、サンセリフ(sans-serif)体と呼ばれる書体もあります。「sans」はフランス語で「ない」という意味です。つまり、サンセリフ体はセリフ(装飾)のない書体を指します。
サンセリフ体は、線の太さがほぼ一定なので視認性に優れており、見出しや案内板などでよく使われます。
サンセリフ体については以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひこちらも合わせて御覧ください。
サンセリフ体とは?ロゴデザイナー愛されフォントになった理由とは?
セリフ体が見る人に与えるイメージ
セリフ体では、セリフ(装飾)によって古風さを醸し出せることから、見る人に伝統的で格調高い印象を与えます。そのため、以前は高級感を演出したい有名ブランドのロゴマークのフォントとして多く使われていました。
一例を挙げると、イギリスを代表するファッションブランド「バーバリー(Burberry)」、ハイブランドとして世界中で愛されている「BALENCIAGA(バレンシアガ)」、フランスのラグジュアリーブランドである「CELINE(セリーヌ)」などです。
また、手書き文字のような雰囲気を表現できるため「信頼感」「真面目」「エレガント」などのイメージも併せ持ちます。
ただし、上述した特徴はあくまで全体的な傾向です。一言でセリフ体といっても様々な種類があり、生まれた時代や国によって異なる個性を持っています。
当然ながら、個性が違えば人に与えるイメージにも少しずつ差が出るものなので、選ぶセリフ体によって、強く表現されるイメージにも違いが出ることは知っておきましょう。
セリフ体ロゴマークが消えている!?
近年、セリフ体のロゴマークが消えて、サンセリフ体へと置き換わる事例が多くみられるようになりました。
その大きな理由の一つが「メイン媒体」の移り変わりです。
これまでは人々が情報を入手する手段といえば雑誌などの紙媒体が主流でした。紙面でのセリフ体は視認性が高く、ロゴが伝わりやすかったことから多く利用されていたのです。
しかし、時代の変化により媒体は多様化。メインの媒体として、スマートフォンやタブレットなどの「モバイル」が台頭してきました。
さらに、YouTubeなどの動画コンテンツが主体となると、線が細いためにセリフ(装飾)が潰れて読みにくくなるセリフ体は敬遠されるようになりました。
そして代わりに、多くのモバイル端末で標準搭載されており、かつ端末サイズに関わらず視認性を確保しやすい「サンセリフ体」が使われるようになったのです。
動画コンテンツがあふれる現代においてサンセリフ体が主流となるのは、自然な流れともいえるでしょう。
セリフ体ロゴマークはなくなる?
結論から言えば「なくなることはない」と考えられます。
セリフ体が持つ「高級感」や「伝統的」なイメージは、サンセリフ体では伝えられない場合も多いです。
また、サンセリフ体のロゴマークは没個性的になってしまう傾向があります。すでにその点が指摘されているロゴマークも存在し、上述した「バーバリー(BURBERRY)」や「セリーヌ(CELINE)」などがその一例です。
白い背景に装飾のないシンプルなサンセリフ体の文字でロゴを作っているので、モバイル端末では読みやすい反面、強いアクセントがなく似通った印象を受けるという声があるのです。
さらに今後、メインの媒体が変わったり、デジタルに合わせてセリフ体を活用できるようになったりすれば、セリフ体が再び勢いを持つ可能性も十分にあります。
そのため、セリフ体は完全に消えてしまわず、「想定される掲載媒体」や「伝えたいイメージ」などの兼ね合いのなかで、より適したフォントが選ばれていくのではないでしょうか。
まとめ
ロゴマークのフォント選びで大切なのは「目的に合っているか」という視点です。
シンプルなゆえに多様なメディアでも対応できるサンセリフ体ですが、競合と似たようなイメージを与えてしまう可能性もあります。
もちろんデジタルで対応できる実用性の高さは魅力です。しかし、企業が伝えたいブランドイメージが消費者に伝わらなければ本末転倒ともいえます。
セリフ体とサンセリフ体、それぞれの性質を考慮しながら、目的を達成するのにより適したフォントを選ぶようにしましょう。