ロゴマークをデザイナーに依頼する場合に、どういったことを伝えれば、満足できる成果物が上がってくるのでしょうか?
ロゴマークというクリエイティブな案件は、ソフトウェアやシステムなどと違って、仕様や要件を明確に決められるものではありません。発注者側で、あらかじめ明確にできるものもあれば、あまり決めつけ過ぎたり、限定しない方がいい部分もあります。
designという英語が、「設計」という意味を持つことから、デザイナーとはプロフェッショナルな設計者であると言えます。最近よく聞く「デザイン思考」という言葉のように、デザイナーは様々な情報を取り入れながら、多角的にデザインを追求しています。
ここでは、デザイナーにロゴマークを依頼する場合に、必ず伝えるべき以下3つのことと、意外と見落とされがちな心構えについてご説明しましょう。
・ロゴマークの用途と目的
・ロゴマークのイメージとタイプ
・デザインの自由度と可能性
1. ロゴマークの用途と目的
まずは、ロゴマークの「用途と目的」をデザイナーに具体的に伝えましょう。たとえば、次のような情報が挙げられます。
・起業するIT関連会社のためのロゴマークで、投資家や銀行、協力機関向けに、PRメディアを通してアピールしたい。
・新しく立ち上げたBtoCサービスのロゴ。PCやスマホで利用するWebサービスに掲載する。将来的にはアプリも制作する予定。
・リニューアルした介護施設のロゴマークで、看板やサイン、チラシやDMで広告を打つために使用。
このような「用途と目的」を起点として、デザイナーはロゴマーク制作の足がかりをつかむことができます。さらにイメージをふくらませるために、デザイナーからはこれらに対して、より突っ込んっだ質問が投げかけられるでしょう。
こうしたやり取りを通して、デザイナーは、デザインの方向性を判断します。
例えば最初のIT企業の例なら、「先進性と信頼感のあるスタイルがいいに違いない」、BtoCサービスのロゴでは、「モバイルファーストで、小さくても認知できるシンプルな形と色がいいな」。また介護施設の場合は、「ひらがなの柔らかい印象を活かして、遠くからでも視認性の良いデザインにしよう」などと判断するわけです。
ターゲットは伝えるべき?
ここで、ロゴマークの「ターゲット」は伝えなくていいの?と疑問に思う方がいるかもしれません。
確かにターゲットが限定された商品のロゴマークなら、ターゲットを伝えることは重要です。しかし一般的には「用途」を伝えることで、デザイナーはターゲットを想定できるはずです。
また、ロゴマークのターゲットを限定しすぎると、将来的なマーケット展開や商品展開の幅を狭めてしまう可能性もあります。
2. ロゴマークのイメージとタイプ
次に、ロゴマークの特徴やスペックとなる「イメージとタイプ」について、デザイナーに伝えます。
イメージとは、ロゴマークを見たときに受ける印象のことです。
タイプとは、ロゴマークのデザイン構成を指します。つまり、シンボルマークとロゴタイプを組み合わせるタイプなのか、文字デザインのロゴタイプ単独の構成なのか、もしくはシンボルマークとロゴタイプをベースにして、おもにシンボルマーク(トレードマーク)を中心に展開していく予定、などの情報です。
参考:最低限知っておきたい、ロゴマークとロゴタイプは何が違うのか
デザイナーは発注者側の希望イメージを聞いて、ロゴマークのデザインテイストと、クライアントの好みの傾向を把握しようとします。好みに合わないロゴマークは、デザイナーがどんなにベストな提案だと信じても、ボツになるリスクが高いからです。
ロゴマークの希望イメージをデザイナーに伝えるには、キーワードや比喩的な表現だけでなく、実際のロゴマークの具体例を、いくつかサンプルとして提示するのが効果的です。さらに「サンプルAはインパクトはあるけど、色はもっと柔らかい方がいい」とか、「サンプルBはとてもユニークな印象だけど、お年寄りが読にくいかも」などのコメントを補足すると、求めるイメージをより明確に共有できるでしょう。
3. デザインの自由度と可能性
最後の「デザインの自由度と可能性」とは、どんな意味でしょう。これは、冒頭に述べた「デザイナーとはプロフェッショナルな設計者である」ということに関連します。
ロゴマークの作成方法には、デザイン会社やデザイナーに依頼する以外にも、オンラインの自動作成ツールやロゴストアを利用したり、クラウドソーシングのコンペなどの選択肢があります。デザイナーへの依頼は、この中でもコストやコミュニケーションの手間が掛かるものです。
参考:ロゴマーク作成の方法
つまり、せっかくプロフェッショナルなデザイナーに頼むのであれば、「どうぞ、好きなようにやってください」というリスペクトの意識を持つことが大切だということです。
良いデザイナーは、必ずクライアントの課題やビジョンを深く考え、最高の結果をもたらそうと努力するものです。デザイナーをプロとして信じ、発注者側がデザインの自由度と可能性を邪魔しないようにすることで、想像以上の素晴らしいロゴマークを手に入れることができるかもしれません。
「会社の若手から、もっとかわいくてカラフルな方がいいという意見が出たので、修正してもらえませんか?」。そんなリクエストが重なった結果、デザイナーのテンションがガクッと落ちてしまい、最初の案が一番良かったのに、最終的には発注者だけが自己満足するロゴがさびしく風に漂っている。こんなデザイナーあるあるネタは、発注者側や生まれたロゴマークにとっても悲劇に違いありません。
まとめ
サステナビリティというと、地球環境や生態系の話と思いがちですが、デザイナーとの付き合いにも持続可能性は大切です。
プロフェッショナルとして、デザイナーに気持ちよく仕事をしてもらうことで、長く愛されるロゴマークが育っていく。そんなデザイナーとのサステナブルな関係は、そのほかの商品プロモーションやさまざまなビジネス上のメリットなど、会社を成長させる「デザイン経営」に繋がっていくかもしれません。